◆第1回◆

なぜいま憲法「改正」なのか?
(その1)続々と出てきた改憲構想


連載を始めるにあたって
 いま、日本国憲法第九条は、大変な岐路に立たされています。読者のみなさんの多くは、これまで、九条を守る運動の先頭に立ってこられた方々でしょう。そのみなさんは、また、九条に対する世間の「風当たり」の強さを直に体験されてきたことと思います。「九条は非現実的だ」、「本当に攻められたらどうする」、「軍事力なくして平和は守れない」などの意見の人と、さまざまな対話や論議を経験してきたことでしょう。
 この連載では、いま平和を希求する私たちが、人類のどのような歴史的努力の上に立っているのか、人類の歴史が、紛争の平和的解決の可能性をどのようにして切り拓いてきたのかを、憲法の発展の視点から、みなさんとともに考えてみたいと思います。

1. めまぐるしい政党の動き
 昨年十一月十七日、自民党の憲法調査会の憲法改正案起草委員会が、「憲法改正草案要綱(たたき台)」を発表しました。これは、六月十日にまとめられた「論点整理」をふまえて日本国憲法の全面的な「改正」を志向するものでした。
 もっとも、この「たたき台」は、そのとりまとめに当たった中谷元・元防衛庁長官が、「昔のよしみ」で(とんでもないことです!)現職の自衛官に安全保障部分の案を作ってもらったことが問題となり、また参議院議員の選び方を間接選挙と任命制にしてしまう案が自民党内部でも猛反発されるなどして、一応「白紙撤回」されました。
 そこで、十二月二十一日に仕切り直しで、小泉純一郎首相を本部長とする「新憲法制定推進本部」を立ち上げ、森喜朗元首相が本部長代理となって、改憲案づくりの挙党体制がつくられました。そして、今年の三月十四日には、「新憲法起草委員会」が中間報告をまとめています。
 自民党は、四月中にも改憲案をまとめる方針と報道されています。民主党も、党独自の改憲構想をまとめるとしています。自民・公明・民主の三党は、憲法改正のための国民投票法案づくりの交渉に入ろうとしています。

2. 財界も総ぐるみで
 またこの間、財界が、次々と改憲構想を発表しています。
 二〇〇三年四月に経済同友会が「憲法問題調査会意見書」を発表したのを皮切りに、昨年の十二月に、日本商工会議所が「憲法改正についての意見―中間とりまとめ」を、そして今年の一月十八日には、財界の「総本山」である日本経団連が、「わが国の基本問題を考える」を発表し、財界総ぐるみで、改憲の雰囲気づくりに乗りだしてきました。

3. 基本は九条改憲
 さまざまな改憲構想に共通するものは、九条をかえて自衛権の保持を明確にし、自衛隊を正式の軍隊にすることです。アメリカと一緒に戦争する体制のための「集団的自衛権」の明示も主張されています。
日本経団連の報告書は、憲法九条二項の「改正」による自衛隊保持の明確化、集団的自衛権の明示と、第九六条の憲法改正の要件の緩和を、「当面もっとも求められる改正」として最初に着手すべきとしています。
(小沢隆一、2005年4月15日「平和新聞」1765号掲載)


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